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第12回 アスクル「ASKUL DESKTOP」 ウィジェット制作レポート

オフィス通販の雄・アスクルの統合ウィジェット環境

 中小企業マーケットを切り開いたアスクルは、1993年に本格的にサービスインしてからわずか15年で年間売上げ1,800億円に迫る急成長を遂げた。そのマーケティング手法への注目度は高い。そのアスクルがリリースしたアスクルデスクトップは、同社のECサイトアスクル・インターネットショップに直接アクセスできる「アスクルブラウザ」や購入実績管理のほか、電卓やRSSリーダー、メモや地図などの11機能を搭載したデスクトップウィジェットの統合環境だ。利用者は「アスクルデスクトップ」を利用することですぐに商品を購入できるほか、現在ウィジェットの分野で主流となっているような機能も一通り体験できるようになっている。
 この「アスクルデスクトップ」の開発環境として選ばれたのが、まだ英語版が正式リリースされたばかりのAdobe AIR。海外ではNASDAQをはじめeBayやAOLといった企業が、このAdobe AIR環境でのウィジェット開発を開始しているほか、国内ではSONYの統合型デスクトップウィジェット環境FLO:QにもAdobe AIRが採用されている。アスクルは、ネットとの親和性の高い先進的な企業がこぞって注目するAdobe AIRのウィジェット開発に、商用サイト用アプリケーションとしては国内の企業の中ではいち早く名乗りを上げた格好だ。

お客様の声で進化するプラットフォーム

 それにしても、カタログ通信販売のイメージが強いアスクルが、なぜ最新プラットホームでのウィジェット開発に挑戦したのだろうか。実は、アスクルの売上げの50%以上がインターネットからの注文によるものだという。

「そのため、メインのお客様である中小企業さまの利便性とアクセス性をさらに確保するために、以前からネットを媒介としたプラットフォームの必要性を感じていました。」

 プロジェクト中心人物である小野俊克氏はこう語る。 「アスクルデスクトップはWindows VistaガジェットやYahoo!ウィジェットで制作されるような通常のウィジェットとは異なり、プラットフォームに重きを置いたスタイルです。これまでのECサイトのあり方を変えるにはプラットフォームから変えていく必要性をずっと感じていて、われわれ自身のプラットフォームを持ちたいという考えがあったんです。そこで出会ったのがAdobe AIRだったというわけです。これなら今後もウィジェット追加していくことで、継続的に様々なサービスをお客様にお届けすることができるのではないかと考えています。」

 アスクルはここ半年だけでも、ビジネスに役立つサービス情報を提供する「アスクルお仕事サポートや、個人向けECサイトぽちっとアスクルをサービスインさせている。そうした動きの中で、企業理念である「お客様のために進化する」を実現するためのベースとなるプラットフォームを求めていたのだ。


「今回は、AIRがまだ日本語対応していないこともあり、『β版』の時点でリリースすることにしました。ただリリースするだけではなく、『β版』での配布に踏み切った最大の理由はお客様の声の収集です。継続的に使われ愛されるプラットフォームとして成長するため、お客様からの声を受け、それを積極的に反映させ進化し続けていきたいと考えています。

アスクルの次世代マーケティング戦略

 では、アスクルが求めるプラットフォームを実現する環境、Adobe AIRとはどのようなものなのだろうか。まず大きな特徴としては、FlashやAction ScriptなどWebの世界で普及した技術を用いていることにより、Webとの親和性や開発スピードの早さを期待できる点がある。またAdobe AIRのランタイムがインストールされているPC環境なら、Windows XPやVistaだけにとどまらず、Mac OS XやLinuxでも動作させることができ、OS毎に開発する必要がない点もメリットとなる。さらに、Adobe AIRの持つ汎用性によって、情報を発信するサーバも既存のものが流用できるという点も見逃せない。つまり、既存のシステムと技術を用いながら、より常駐性の高いソフトウェア環境を構築できる可能性を秘めているのだ。
「すでにたくさんのお客様に利用いただいている『アスクル・インターネットショップ』の仕様を変更することは、お客様の利便性という意味でも避けなければならないという状況がまずありました。既存のデータをそのまま利用するというのは、やはりそれなりの苦労は必要でしたが、これを実現できたのはAdobe AIRだったからこそ、という部分は大きいと思います。」
 しかし、現状Adobe AIRは英語版のみのリリースであり、高速に動作する推奨環境も他のウィジェットに比べてハードルが高いのも事実だ。

「現状『アスクルブラウザ』での日本語使用や表示には制限がありますし、お客様からのフィードバックで動作が重いというご意見もいただいています。まだAdobe AIRはバージョンアップごとに仕様が変わる可能性もありますので、手探りの部分があることは否めませんが、こうした問題点を解決するために、現在も引き続き開発を進めているところです。ただ、『期待しているのでがんばってほしい』というような激励をいただくことも多く、ダウンロード数に対する定着率は当初に想定していたよりもずいぶん高くなっていまして、かなり手ごたえは感じています。こうした期待を裏切らず、より愛されるツールへと進化し続けていけるようフォローアップしていきたいと考えています。」

日本発のEC革命を

 アスクルデスクトップβ版から正式版リリースに向けての意気込みを、川村真澄氏はこう語る。


「お客様にとっては、プラットフォームが何であるかより『何ができるか』が重要ですよね。それに、こうしたアプリケーションには『遊び』の部分も重要だと思います。そこが愛着につながっていく。そのためにもより多くの方に使っていただき『コメント投稿』からお声を寄せていただきたいと思ってます。アスクルのアカウントをお持ちでなくても多くの機能は体感いただけますので、ぜひ試していただければ嬉しいです。」

 まずは、使って愛着のもてるプラットフォームに育てたいという意志を感じる頼もしい言葉だが、その背景には次のような哲学があった。 「これは私達が開発パートナーであるサイトフォーディ㈱(SiTE4D)に大きく共感したポイントでもあるのですが、日本発でソフトウェアのあり方を変えていきたい。世界的な日本メーカーは何社かありますが、なかなかソフトウェア、特にECの分野ではない。アメリカのやり方をまだ踏襲しているだけですよね。日本独自のECのあり方というものを、このアスクルデスクトップを通じて立ち上げられたらという思いがあります。」

 中小企業をターゲットにしたオフィス通販という分野を開拓し、一大マーケットにまで育て上げたアスクル。単なるソフトウェアの開発にとどまらない、こうした明確な意志が、Adobe AIRという先進的な技術と組み合わさった時、どんなマーケットを創造していくのか。これからの展開に目が離せない。


『アスクルデスクトップ』


文:坂本 寛(タブロイド)/widgetown編集部
2008年6月3日
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